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大阪高等裁判所 昭和52年(行コ)18号 判決 1977年12月23日

寝屋川市大字太泰九九八番地

控訴人

上平孝雄

右訴訟代理人弁護士

野村清美

澤田恒

神田俊之

枚方市大垣内町二丁目九番九号

被控訴人

枚方税務署長

岡山亮次

右指定代理人

平井義丸

清家順一

大河原延房

片山敬祐

山口正

右当事者間の所得税賦課決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人が控訴人に対して昭和四七年七月八日付でした控訴人の昭和四五年分所得税についての更正処分は課税長期譲渡所得金額のうち一、六九九、六五三円を超える部分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、次に述べるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人の主張

控訴人は、原審において、本件物件の贈与もしくは財産分与の日は昭和四五年三月六日であることを認めたが、右自白は真実に反し、かつ錯誤に基づくものであるからこれを取消す。控訴人と上平シカノ間の本件物件の贈与もしくは財産分与は昭和四四年八月四日に右両名および篠田光雄、増田政一郎ら立会のうえなされたもので、同日これを明確にすべく「協議離婚に伴う資産分割協議書」(甲第六号証)が作成された。そして、上平シカノは同年九月二九日所定の贈与税を自今で納付することを確約し、念書(甲第三号証)を作成して控訴人に交付した。右のごとく控訴人から上平シカノに対する本件物件の贈与もしくは財産分与は昭和四四年八月四日になされたもので、大阪家庭裁判所の離婚の調停調書(乙第一号証)中本件物件に関する部分は右の事実を確認したに過ぎないものである。

被控訴代理人の主張

控訴人の当審における右自白の撤回には異議がある。

証拠関係

控訴代理人は、当審において新たに甲第六号証(写)を提出し、被控訴代理人は、甲第六号証の原本の存在並びに成立は不知と述べた。

理由

当裁判所も原審と同様、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断する。その理由は次のように一部付加訂正するほか、原判決に説示のとおりであるから、これを引用する。

一、原判決六枚目表八行目の「これは」の次に「権利自白であつて」を加える。

二、控訴人は、原審において、本件物件の贈与もしくは財産分与の日は昭和四五年三月六日であることを認め、その後当審において右自白は真実に反しかつ錯誤に基づくものであることを理由としてこれを取消したけれども、控訴人の立証資料によつてはいまだ右自白が真実に反しかつ錯誤に基づくものであることを認めるに足りない(甲第六号証についてはその成立を認むべき証拠がない。)から、右自白の取消しはこれを許容することができない。

そうすると、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民訴法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林定人 裁判官 鍬守正一 裁判官 石田真)

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